本研究の目的は、冠動脈プラークの形状や組織性状を血管内エコーを用いて経時的に観察しプラークの不安定化に関与する全身、ならびに局所因子について検討することにある。初年度である平成16年度において、以下の研究成果を得てAmerican College of CardiologyのScientific Session(New Orleans)にて発表した。まず、冠動脈のリモデリングの局所規定因子について冠動脈の同一断面を血管内エコー法により経時的に観察して検討した。その結果、冠動脈プラークが増減に応じて血管断面積は平行して増減し、偏心性プラークであるほどpositive remodelingを来たし、その最大厚が増加するほど血管断面は楕円化した。すなわち、冠動脈プラークのリモデリングには局所的因子が存在していることが示された。Positive remodelingは特に不安定プラークと関係があり、このような局所因子はひいてはプラークの不安定化の機序に関係しているかもしれない。次に、血管内エコー法により冠動脈内腔の3次元形状を抽出し、コンピュータシミュレーションによって冠動脈内皮のシェアストレス分布をカラーマッピングする手法を開発した。その結果、プラークの破綻箇所にはシェアストレスが異常に集中していた可能性があることが判明した。すなわちプラークの不安定化、ならびに破綻の機序にはシェアストレスが関与していることが示唆された。このように、プラークの不安定化には、種々の局所的因子が関与していることが示された。
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