研究概要 |
アンジオテンシンIIと高血圧は血管壁の酸化ストレスを増加させ,血管のリモデリングを進行させる重要な因子である.高血圧における血管平滑筋細胞の収縮型から合成型への形質変換の機序を解明するため,レニン-アンジオテンシン系阻害薬とカルシウム拮抗薬の血管平滑筋細胞の形質変換に対する効果を比較検討した.その結果,アンジオテンシンII受容体タイプ1(AT_I)拮抗薬はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬よりも早期に転写因子GATA-6を増加させることで高血圧自然発症ラット(SHR)の心筋内細動脈の血管平滑筋細胞の形質変換を抑制した.さらに脳卒中易発症SHRにおいて,ACE阻害薬とAT1受容体拮抗薬はともにNAD(P)H oxidase活性を抑制し内皮依存型NO(eNOS)とAktを増加させ血管平滑筋細胞の形質変換を合成型から収縮型に誘導したことから,AT1受容体を介するNAD(P)H oxidaseにより産生される酸化ストレス,eNOSおよびAktが血管平滑筋細胞の形質変換に重要であることが示された.また,脳卒中易発症SHRにおいてジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は酸化ストレスと血管リモデリングをCu/Zn superoxide dismutase(SOD)を活性化することにより抑制したことから,ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は血圧と独立した酸化ストレス消去系酵素であるCu/ZnSOD活性化を介して抗動脈硬化作用を発揮していることが示された.さらにtoll-like receptor(TLR)4欠損マウスを用いた研究から,アンジオテンシンIIによる血管壁内の酸化ストレス増加にはTLR4の存在が必須である可能性が示唆された.
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