研究課題/領域番号 |
16590693
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
土居 義典 高知大学, 医学部, 教授 (90140144)
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研究分担者 |
北岡 裕章 高知大学, 医学部, 助手 (10274375)
松村 敬久 高知大学, 医学部, 助手 (10274391)
山崎 直仁 高知大学, 医学部附属病院, 助手 (90284447)
久保 亨 高知大学, 医学部附属病院, 医員 (80325422)
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キーワード | 心筋症 / 心筋症ネットワーク / 遺伝子解析 |
研究概要 |
(1)高知県心筋症ネットワークの確立 平成16年度に高知県内の基幹病院を中心に心筋症ネットワークを構築した。現在、各病院において文書で同意の得られた心筋症患者の登録を行い、同時に、診断時の状況・症状の種類や程度・突然死の家族歴など家系の評価・内服薬や恒久的ペースメーカー植込み等の治療状況などについて調査を進めている。今後は本登録調査を継続し、新たな患者の登録をすすめるとともに、経時的変化の中で、症状の変化・治療内容の変化・心血管イベントの有無・予後について追跡調査を行うことを予定している。以上の方法によって、これまでに報告されている欧米のデータと比較して、我が国における心筋症の状況を総合的に評価していく。 (2)心筋症の病因と病態の解析 肥大型心筋症(HCM)は、その形態・機能変化が生涯を通じて進行する疾患と考えられ、時間経過とともに左室リモデリング(肥大の出現から進展さらには拡大に至る)をきたす。重要な合併症として従来は突然死に強い関心が払われてきたが、長期的視点で経過を観察するとどのような自然歴をたどるのかは十分に解明されていない。我々は、長期フォローアップ患者では心不全の合併が増加してくることを報告し、左室リモデリングの進行とその合併症について新たな知見を示した(Circ J 2006;70:1543-1549)。さらに我々は、サルコメア遺伝子変異を有するHCM患者を若年者と高齢者の2群に分け、HCMの形態を評価したところ、若年者の特徴とされていた左室のねじれ(crescent-shaped LV;三日月型左室)はいずれの群でも高頻度であり、さらに高齢者群に多いとされていた中隔基部の突出は遺伝子変異を有する高齢者HCMでは一人も見られなかった。つまり従来までに報告された高齢者HCMの形態的特徴は、サルコメア蛋白遺伝子異常以外の原因(加齢変化や軽度の高血圧)による左室肥大を反映している可能性が示唆され、真のHCM(サルコメア遺伝子変異による心肥大という意味において)では、高齢者であっても若年者HCMの形態に近いことが示された(Circ J 2006;70:875-879)。 拡張型心筋症の研究では、1990年以前から現在までの治療の変遷を検討し、予後改善因子として、ACE阻害薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬・β遮断薬の使用と、抗不整脈薬(IaおよびIb群)の不使用を報告した(Circ J 2006;70:376-383)。 拘束型心筋症(RCM)の研究では、HCMとRCMの類似点に着目し、HCMの観点から家族歴・自然歴・病因遺伝子変異の同定を行い、この分野において新たな概念を示した(J Am Coll Cardiol 2007;in press)。
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