研究課題
内皮細胞の細胞間接触の形成に伴い増殖を停止する際にp27^<Kip1>蛋白質の発現が増加する。この発現増加は、Kip1遺伝子の転写の活性化によることを報告した。しかし、細胞間接触により引き起こされるKip1遺伝子の転写亢進の機序は、未だ不明である。本研究では、細胞間接触によるKip1遺伝子の転写活性化に関わるシグナル伝達網を明らかにすることを目的とした。Kip1遺伝子の全長を含むクローンを分離し、翻訳開始点の上流686bpまでのプロモーター領域を組み込んだレポータープラスミドをウシ大動脈内皮細胞に導入し、プロモーター活性を二重ルシフェラーゼ法で解析した。細胞間接触による転写亢進を検討するために、細胞間接触を誘導しないコントロールの培養系、内皮細胞同士の同種細胞間接触を誘導した系、HeLa細胞と内皮細胞との異種の細胞間接触を誘導した3つの系で、内皮細胞の転写活性を解析し、比較した。通常の培養系と異種の細胞間接触を誘導した系では、同程度の転写活性を示したのに対して、同種細胞間接触を誘導した系では、p27^<Kip1>遺伝子のプロモーター活性が増加した。「細胞間接触」信号の受容から転写調節に至るシグナル伝達系を明らかにするために、HIV TAT蛋白質を利用した細胞内蛋白質導入法を用いて、低分子G蛋白質のRhoキナーゼのRhoA結合ドメインを、細胞内に導入したところ、同種細胞間接触を誘導した系での、p27^<Kip1>遺伝子のプロモーター活性の増加がコントロールの培養系と同程度にまで抑制された。細胞間接触と内皮機能調節の仕組みを明らかにするために、密な細胞間接触を形成した細胞と細胞間接触が未形成な細胞にTNFαを用いてアポトーシスを誘導したところ、密な細胞間接触を形成した細胞ではアポトーシスは引き起こされなかった。
すべて 2004
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