研究概要 |
アポ蛋白Jを血管に過剰発現するトランスジェニックマウス(apoJ-Tg, n=15)とアポ蛋白Jを欠損するノックアウトマウス(apoJ-KO, n=15)と野生型マウスC57BL/6(wild, n=15)の大腿動脈にポリエチレンカフを装着して血管傷害モデルを作成した。ポリエチレンカフ装着後4週間でマウスを屠殺し、大腿動脈を採取し、新生内膜病変面積を定量的に解析した。その結果、カフ装着4週後の体重と総コレステロール値は、各群間で有意差を認めなかったが、新生内膜面積と中膜面積の比(I/M比)は、wild群25±3%、apoJ-Tg群33±3%、apoJ-KO群15±2%と、wild群に比べapoJ-Tg群では有意に高値を(P<0.01)、apoJ-KO群では有意に低値を示した(P<0.01)。以上の結果よりapoJが新生内膜肥厚を促進することが明らかにされ、さらに機序に関し検討を行った。抗活性型caspase-3抗体を用いた免疫組織化学染色では、3群間で染色性に差を認めなかったが、抗p53抗体、抗p21抗体および抗p27抗体を用いた免疫組織化学染色では、wildマウスに比べ、apoJ-KOマウスにおいて、新生内膜の平滑筋細胞の核への集積をより多く認めた。このことより、アポ蛋白J欠損は細胞周期停止により、新生内膜肥厚が抑制されることが示唆された。 また、動脈硬化易発症マウスであるアポ蛋白E欠損マウスとアポ蛋白Jの遺伝子改変マウスとの交配によるアポ蛋白Jの作用の検討に関しても、現在交配をすすめ、アポ蛋白E欠損のバックグランドにアポ蛋白Jを過剰発現するapoJ+/apoE^<-/->とアポ蛋白Jを欠損するapoJ^<-/->apoE^<-/->を作成している。 臨床における動脈硬化や血管形成術後再狭窄と血中アポ蛋白J濃度との関連を検討するためにアポ蛋白JのELISA測定系を完成させた。現在、患者の血中濃度の測定を行っている。
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