研究概要 |
血管内皮細胞におけるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)の抗動脈硬化作用の機序を明らかにした(Arterioscler Thromb Vasc Biol.2005,25:155)。HO-1反応由来のビリルビンが血管内皮細胞の活性化や内皮細胞の機能不全を抑制することを報告した。すなわち、ビリルビンは酸化LDLやTNF-αによる内皮細胞由来のVCAM-1、MCP-1、MCSFの産生亢進やeNOS発現低下を抑制した。これらの作用はもう一つのHO-1産物である一酸化炭素(CO)には認められなかった。また、高脂肪食を負荷したLDLレセプター欠損マウスの摘出血管の内皮(アセチルコリン)依存性の弛緩反応もビリルビンにより改善したがCO曝露によっては改善がなかった。HOアイソフォームであるHO-2の血管壁での機能に関してはHO-2-LDLレセプター二重欠損マウスを作製し、動脈硬化進展に及ぼす影響を観察した。研究結果は2004年のアメリカ心臓学会のModerated Posterに採択され発表した。現在、マウスの表現系の解析をさらに進め投稿を準備中である。HO-2欠損マウスを用いた研究として低酸素に対する換気応答の異常と肺静脈壁の解剖学的肥厚を発見し発表した(Biochem.Biophys.Res.Commun.2004,320:514)。また、ミトコンドリア遺伝子3243の点変異に伴う心筋症患者において過剰に活性酸素種が産生されHO-1系が賦活化していることを観察し、症例報告として掲載予定である(Circ J.2005,69,in press.)。尚、HOの心血管系における保護作用の機序に関して血管内皮とマクロファージで作用が異なる点について2005年3月の日本循環器学会総会プレナリーセッションで講演し、HO系の循環器病領域での研究の動向を概説した。
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