研究概要 |
loxP導入アンジオテンシノーゲン遺伝子マウスの作製。 アンジオテンシノーゲン遺伝子の機能ドメインであるexon2領域をloxPではさんだloxP導入アンジオテンシノーゲン遺伝子を用いたターゲティングベクターを作製し、マウスES細胞に遺伝子導入し、相同組み換え体をサザンブロット法にて選びだした。ICRマウス8細胞期胚にマイクロインジェクションし、相同組み換え体マウスの作製を行った。現在ホモ接合体の作製を行っている段階である。本テーマについては、遺伝子改変マウスを用いた解析に加え、siRNAを用いた腎臓特異的アンジオテンシノーゲン遺伝子抑制モデルの作製を試みており、現在のところ有効な遺伝子発現抑制が得られている。遺伝子改変マウスと遺伝子抑制モデルの二つのモデルを用いて、腎臓レニン-アンジオテンシン系の病態生理学的解析を行っており、今後1年以内に研究成果を発表する計画である。 組織レニン-アンジオテンシン系の病態生理学的解析 アンジオテンシノーゲン遺伝子欠損マウス(Atg-/-)を用いて、腎臓緻密斑におけるシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)の発現について検討した。Atg-/-の腎臓緻密斑では、COX-2発現が著明に亢進していた。この亢進は高食塩食負荷で抑制された。また、この亢進は神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)阻害薬投与によっても抑制された。腎臓緻密斑におけるCOX-2は、アンジオテンシンII、高食塩食およびnNOSによって制御されている可能性が示唆された(Nephron,2006)。ATla-/-を用いて、腎臓内血管における内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現について検討した。ATla-/-の腎皮質では、食塩摂取量の変化や血圧変化によるeNOS発現の変化が正に調節されていた。心臓や肝臓ではこのような変化はみられず、野生型マウスの腎臓でもみられなかった。Atg-/-でもほぼ同様の結果が得られており、腎臓RASは、食塩摂取量の変化や血圧変化によるeNOS発現を一定に保つのに必須である可能性が示唆された(J Am Soc Nephrol,2004,Cell Tissue Res,2006)。また、腎臓RASの調節に直接関わりのあるATl receptor-associated proteinの腎臓における発現部位について、ATl受容体発現部位との関連を含めて解析した(Kidney Int,2006)。さらに、腸炎におけるRASの関与を検討し、Atg-/-では病変の形成が抑制されていることを見出した((Gut,2005)。本研究によってさまざまな組織における組織RASの関与を明らかにした。このことは本研究の関連する疾患におけるRAS抑制の有用性を示唆するものである。
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