研究概要 |
心血管領域における幹細胞研究、再生医学では血管内皮前駆細胞、胚性幹細胞(ES細胞)などでめざましい展開がみられている一方で、その供給の安定性や倫理面、さらには移植に対する安全性などの問題が指摘されている。一方、tissue-engineeringの手法を用いて作製される再生血管も、その使用は肺動脈圧程度の中等度以下の血圧の範囲内での使用に制限されており、その強度を増強するためには平滑筋細胞や間質細胞の分化誘導が喫緊の課題である。我々は平成16年までの基盤研究において骨髄間質細胞より平滑筋特異的なSM22α遺伝子のcis-elementとGFPをリポーターとして平滑筋前駆細胞を分離し、平滑筋細胞の分化誘導を行うことに成功した(Kashiwakura et al.,Circulation2003)。本研究の目的は、臍帯血の間葉系幹細胞より、同様の平滑筋前駆細胞を分離することおよび現在までの研究で骨髄間質より分離した平滑筋前駆細胞から比較的大量の平滑筋細胞を分化誘導することである。本年度はまず、これまでに確立している骨髄間質細胞中の平滑筋前駆細胞の発生と分化をどのような因子が規定しているかを調べるため、SM22α遺伝子のcis-elementとGFPをトランスフェクトした骨髄間質細胞にさまざまなgrowth factorやligandを作用させてGFP陽性細胞の出現頻度を観察した。その結果、ある種のgrowth factorで出現頻度が増加したのに対し、PPAR-gamma agonistで出現頻度が減少する傾向にあり、骨髄からの動脈硬化層への平滑筋前駆細胞の供給を抑制する可能性があり、データの一部は日本循環器学会総会で発表した。骨髄間質細胞は採取が容易であり、それらを培養下で平滑筋細胞に分化誘導し自家移植することが可能となれば、多くの心血管疾患の解決につながる可能性がある。
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