血管傷害後の内膜肥厚に際し、流血中の造血幹細胞が平滑筋細胞に分化する可能性が示されているが、骨髄間質細胞から平滑筋細胞への分化に関しての詳細な検討は少ない。骨髄間質細胞は骨髄中に存在し骨髄穿刺で容易に採取でき、培養技術も確立していることから、最も現実的な間葉系幹細胞の供給源と考えられている。われわれは平滑筋細胞に特異的なヒトSM22αプロモーターをGFPに連結したconstructを骨髄間質細胞にtransfectした後GFP陽性細胞を分離しputativeな平滑筋前駆細胞を単離することに成功した。これらの細胞群は分離した時点ではPDGF-βのみ陽性でFlK-1、CD34などの幹細胞マーカーは陰性であったが、培養3-4週間で平滑筋ミオシン重鎖やカルポニンを発現するようになり平滑筋細胞に分化していくことが示された。本研究において骨髄間質細胞中の平滑筋前駆細胞の発生と分化をどのような因子が規定しているかを調べるため、SM22α/GFP constructをトランスフェクトした骨髄間質細胞にさまざまなgrowth factorやligandを作用させてGFP陽性細胞の出現頻度を観察した。その結果、growth factorであるPDGF-BBおよびTGF-βで出現頻度が増加したのに対し、PPAR-γagonistであるpioglitazoneで出現頻度が減少する傾向にあり、骨髄からの動脈硬化層への平滑筋前駆細胞の供給を低下させることにより動脈硬化の進展を抑制する可能性が示唆された。これらのデータの一部はMolecular Cardiovascular Conferenceおよび日本循環器学会総会で発表した。骨髄間質細胞は採取が容易であり、それらを培養下で平滑筋細胞に分化誘導し自家移植することが可能となれば、多くの心血管疾患の解決につながる可能性が期待される。
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