研究概要 |
本研究では血管内皮細胞をコラーゲンゲル内で三次元的に培養することにより管腔様構造形成を誘導し、この時に特異的に発現亢進またはリン酸化するタンパク質を、プロテオソーム解析を用いて網羅的に取得し、得られた内皮細胞分化マーカータンパク質の血管新生に対する機能を明らかにすることを目的として検討を行った。ウシ毛細血管内皮(BCE)細胞を用いた検討では、管腔形成に伴い発現増加が認められる21個のタンパク質スポットを同定し、質量分析による解析の結果、これらはalpha B crystallin, phosphatidylethanolamine binding protein, Homeobox protein, phosphoglycerate kinaseなどのタンパク質であることが明らかになった。また管腔形成に伴いリン酸化するタンパク質として、220kDaおよび280kDaのバンドが確認された。そこでBCE細胞をコラーゲンゲル上で大量培養し、得られた細胞抽出液をアガロース結合抗リン酸化チロシン抗体カラムを用いて大量分離調整を行い、質量分析にてこれらのタンパク質の同定を試みた。その結果、微小管結合タンパク質であるnineinを同定した。nineinに対するウエスタンブロット解析により、管腔形成の時期(分化誘導8-48時間)に一致して、このタンパク質がチロシンリン酸化することを確認した。またnineinに対するSiRNAをBCE細胞に導入し、タンパク質発現を抑制した結果、BCE細胞の管腔形成能は、コントロールsiRNAを導入したBCE細胞に比べて有意に低下した。これらの結果から微小管結合タンパク質であるnineinは管腔形成を制御する重要なタンパク分子であることが明らかになった。
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