平成18年度は以下の研究を行ない結果を出した。 目的:本邦における神経調節性失神(NMS)、特に状況失神の臨床像を明らかにし、就労と職場環境ストレスとの関連性を調査すること。 【方法】NMSにおける失神の好発時刻(時間帯)を調べ、状況失神についてはその特徴と診断法について検討した。また、NMS患者に郵送によるアンケート調査を行い失神の就労に及ぼす影響について検討した。 【結果】失神発作の日内分布では血管迷走神経性失神(VVS)は午前中に多く発症し、午前6時〜9時に1最大のピークを認めた。また、2つ目のピークは午後6時〜9時に認められ過半数が飲酒と関係していた。-排尿失神は8割以上が男性で中年に多く、ほとんどが夜間〜早朝に起こり、8割以上が飲酒と関連して発症していた。嚥下性失神では嚥下負荷もしくはValsalva試験で発作が再現可能であった。アンケート調査では仕事中の失神は回答の得られた368例中143例(39%)が経験しており、55例(34%)が失神時に外傷を経験していた。失神の誘因として疲労、仕事における精神的ストレスおよび睡眠不足が多かった。失神のため71例(48%)で仕事内容が変わり、その内の26例は退職していた。職場は50人以下の小さな事業所が52%を占め、産業医など医療職のいない場合が多いためか、患者は仕事内容について家族や友人に相談することが多かった。 【結語】NMSの特徴や好発時間帯を認識することは、職場やその周辺の環境における失神予防に有用と考えられた。また、失神患者のアンケート調査により、仕事中の失神発作が就労に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。
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