研究概要 |
Ghrelin(グレリン)は分担研究者の寒川らが発見した新規の成長ホルモン(GH)分泌促進ペプチドであり、脳下垂体からのGH分泌促進作用のほかに、摂食調節、糖および脂質代謝、骨代謝などに対する多彩な作用を有する。投与したGhrelinは顕著な交感神経抑制作用をもち、心疾患の新しい治療法としての可能性が注目されているが、心疾患における病態生理的意義および治療効果は不明である。平成16年度はGhrelinの循環器系における新しい機能および病態生理的意義を明らかにするため、遺伝子発現、分泌調節機序を中心として研究を遂行し以下のような結果を得ている。 (1)心臓Ghrelinの生理的意義検討:Ghrelinの生理的意義を明らかにするために免疫組織化学(IHC)およびin situ hybridization (ISH)法を用いて正常の心臓におけるGhrelinの局在を検討したところ、正常な心臓にはほとんどGhrelinは証明されなかった。現在、Ghrelin遺伝子発現の高感度の定量が可能なreal time PCRの系を用いて、微量なGhrelin遺伝子発現調節を検討中である。 (2)心臓Ghrelinの病態生理的意義検討:病的心臓におけるGhrelinの発現調節を検討するため、心筋梗塞ラット、拡張型心筋症モデルハムスター及び心肥大・線維化モデルであるGC-A遺伝子欠損マウスを確立した。現在これらの心臓からmRNAを調製してGhrelinの心臓局所での発現調節をIHC, ISH法を用いて検討中である。さらに、これら心疾患モデルの病態で、Ghrelinの主な産生部位である胃での発現や肺における発現調節も検討している。 (3)ラット心筋梗塞モデルを用いた検討:生体において浸透圧ミニポンプを用いてGhrelinを安定的に静脈内投与する方法を確立した。今後、病態モデルに対してGhrelinの効果を検証する。
|