研究概要 |
目的:慢性閉塞性肺疾患(COPD)の初期症状は労作時の息切れ、いわゆる呼吸困難であるが、病状の進行とともに安静時にも呼吸困難を感じるようになり、日常の活動が著しく制限される。かかる呼吸困難は脳によって認識されが、その際の脳の局所機能については全く知られていない。本研究は^<18>Fフルオロデオキシグルコース(FDG)を用いたポジトロン断層撮影(PET)による機能的脳画像解析法により脳組織におけるグルコース代謝の局所変化を検出して、呼吸困難時の脳内代謝賦活部位及び抑制部位を明らかにすることを目的とする。 方法:本年度は健常者(5名)を対象にして、低い吸気抵抗(30 cmH20/1/sec)あるいは高い吸気抵抗(70 cmH20/1/sec)の二種類の吸気抵抗を30分間負荷して呼吸困難度をボルグスケール評価するとともに、^<18>Fフルオロデオキシグルコース(FDG)を用いたポジトロン断層撮影(PET)による機能的脳画像解析法により脳組織におけるグルコース代謝の局所変化を検討した。安静時呼吸困難のあるCOPD患者(2名)については抵抗負荷しないで同様な脳の機能的画像解析を行なった。脳画像の定量的解析には統計学的画像診断法を用いた。 結果:呼吸困難は吸気抵抗の大きさに依存して、呼吸努力感の強い呼吸困難が大きくなった。吸気抵抗負荷時に、脳内代謝賦活部位と抑制部位が認められた。前者にはprecentral gyrus, postcentral gyrus, orbital gyrusが相当し、後者にはprecuneus, middle frontal gyrus, suerior parietal lobe, parieto-occipital areas, cingulated gyrusが相当した。基本的には前年度の結果と同様であった。COPDについては症例数が少ないので次年度に症例を加えて、検討することとし、本年度においては個々の症例の脳画像を得ることに留まった。 結論:健常者に吸気抵抗負荷して呼吸困難を引き起こすと、脳は均一に活動するのではなく、脳局所により賦活部位と抑制部位が混在することが明らかとなった。
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