1.慢性閉塞性肺疾患の急性増悪にはライノウイルス感染による気道喀痰増加が関与する。気道喀痰増加にはムチン合成が関係するが、ライノウイルス感染の作用は不明であった。培養ヒト気管上皮細胞および粘膜下腺細胞のムチン合成に対するライノウイルス感染の作用を調べた。培養ヒト気管上皮細胞および粘膜下腺細胞はそれぞれMUC1-3、MUC5AC、MUC5B、MUC6 6種類およびMUC7を加えた7種類のムチンmRMを合成した。ライノウイルス感染は気管上皮細胞の発現する6種類すべてのムチンmRNA合成と、気管粘膜下腺細胞におけるMCU5AcmRNAを含む4種類のムチンmRNA合成を亢進した。培養液ムチン量もライノウイルス感染で増加した。細胞内シグナルについて、阻害薬を用いた研究の結果、気管上皮細胞および気管粘膜下腺細胞における分泌型ムチンMUC5ACの合成・分泌に、転写因子NF-κBやp44/42mitogen-activated protein kinase、Srcなどの経路の関与が示唆された。また、マクロライド抗生物質エリスロマイシンが気管上皮細胞のムチン分泌を抑制した。 2.気道上皮細胞のライノウイルス感染の際の防御能を調べる目的で、ヒト培養上皮細胞のベータ・デフェンシン合成に対するライノウイルス感染の効果を測定した。ヒト培養上皮細胞はヒト・ベータ・デフェンシン(HBD)-1、HBD-2およびHBD-3を合成し、ライノウイルス感染でHBD-1およびHBD-3の合成が増加した。ライノウイルスは気道上皮細胞の傷害作用が弱く、むしろ、防御能亢進に作用すると示唆された。
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