研究概要 |
COPDモデル動物の表現型解析 これまでの研究から、(1)klotho遺伝子ホモ欠損(KL-/-)マウスは4週齢になると肺気腫を自然発症し、(2)klotho遺伝子の発現が野生型マウスの約50%に減少した状態にあるklotho遺伝子ヘテロ欠損(KL+/-)マウスはタバコ主流煙曝露で肺気腫を形成する、ことが明らかとなっている。以上のことから、klotho遺伝子は肺気腫の形成に関して抑制的に機能していると同時に、喫煙感受性を決定しているとい推測される。従って、klotho遺伝子強制発現(Tg-klotho)フットは、タバコ主流煙曝露による肺気腫の発症に関して抵抗性をもつことが予想されている。本年度はその準備段階としてTg-klothoラットの表現型解析を行った。 (1)Tg-klothoラットと野生型ラットは外見では区別することはできない。 (2)顕微鏡的には、肺を含め、KL-/-マウスで異常の認められた大動脈や腎臓、さらに心臓などに異常所見はなかった。 (3)Tg-klothoラットと野生型ラットとで、収縮期血圧に差を認めなかった(145 +/- 15mmHg vs,138 +/- 4mmg)。 (4)acetylcholineに対する、血管内皮依存性の血管拡張反応を大動脈で解析すると、Tg-khothoラットでは野生型ラットと比較して有意に反応性が高かった(56 +/- 6% vs,42 +/- 4%,n=9)。 (5)尿中のNO代謝産物(NOx)は、Tg-klothoラットで有意に多かった(20.5 +/- 4.3mmol/day vs.10.3 +/- 2.1mmol/day,n=6)。また、酸化ストレスのマーカーであるisoprostane(8-iso prostaglandin F2 alpha) の尿中排泄量は、Tg-klothoラットで有為に減少していた(102+/-4pg/ml Cr vx.145+/- 6pg/ml Cr)。 (6)Superoxideに反応して蛍光を発するHydroethidineで大動脈を染色すると、Tg-klothoラットでは野生型ラットと比較して蛍光が減弱していた。 以上のように、Tg-klothoラットは形態的に肺を含む諸臓器に変化を認めなかったが、血管内皮機能やsuperoxide産生の点では野生型フットと異なる表現型を示していた。
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