研究概要 |
アドレノメデュリン(以下AM)が気管支喘息の発症分子機序に果たす役割を明らかにするため、AMのヘテロノックアウトマウス(AM-KO)を作製して実験に用いた。Ovalbumin腹腔内投与により感作したマウス(AM-KOマウス、野生型マウスを使用)に対して2日間(1日60分間)の抗原吸入負荷を施行し喘息モデルを作成した。対象群として、生理食塩水の腹腔内投与、吸入を施行したマウスを用いた。マウスを麻酔・人工換気下におき気道内圧を測定し、肺抵抗、肺コンプライアンスを算出した。気道過敏性を評価するため、メサコリン吸入負荷を施行し評価した。その結果、AM-KOマウスにおいて有意に気道過敏性が亢進している事実が明らかになった(肺抵抗を2倍に上昇させるために必要な吸入メサコリン濃度:saline-treated AM^<+/+>,16.81±2.01mg/ml ; saline-treated AM^<+/->,16.73±2.34mg/ml ; OVA-treated AM^<+/+>,7.95±0.98mg/ml ; OVA-treated AM^<+/->,2.41±0.63mg/ml)。さらに、肺組織標本を作成して検討したところ、OVA感作群で高度の好酸球浸潤や杯細胞過形成、気道粘液分泌過剰を認めたが、AM-KOマウスと野生型の問に有意な差はみられなかった。気管支肺胞洗浄液中や血清中の細胞成分分画、IgE、IgG1、IL-4、IL-5、IFN-γ、ロイコトリエンの濃度を測定したが、AM-KOマウスと野生型マウスとの間に有意な差は認められなかった。組織形態学的解析を行ったところ、気道上皮の面積のみ、AM-KOマウスと野生型マウスの間に有意差が認められた。以上の結果から、AMのヘテロノックアウトマウスでは気道過敏性が亢進し、気道上皮細胞の膨化が関与している可能性が示唆された。
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