前年度までに行った抗腫瘍樹状細胞ワクチンの効果を増強させることを目的に、効率よく腫瘍抗原を樹状細胞に提示させるコンディションについて検討した。結果として、アポトーシスに陥った腫瘍細胞が最も効率的な腫瘍抗原のソースであることが明らかとなった。このアポトーシスを誘導する手段として、TRAILを介するdeath signalをDR5に対するagonistic mAb(MD5-1)で誘導した場合、高率に腫瘍拒絶を誘導可能であった。さらに樹状細胞を活性化させ、抗原提示を高効率化するためにCD40に対するagonistic mAb、そしてCTLの誘導を促進するCD137(4-1BB)に対するagonistic mAbを組み合わせことにより、抗体のみでも腫瘍拒絶が誘導可能であることが明らかとなり、Nat med 12:693-698に報告した。また樹状細胞からの腫瘍抗原提示を、最も効率良く誘導する方法の一つとして、腫瘍・樹状細胞融合を考え、BTX社のエレクトリックパルス発生装置を用いて電気刺激により融合させた。融合細胞の高い抗原提示能を新たな治療法として用い、確立するために、in vitroにおけるNaive T細胞との混合培養からeffector T細胞の誘導を試みた。その結果、CD25、CD69陽性、CD62Lの陰性化を伴う活性化T細胞が誘導された。このeffector T細胞はin vitroでの自己腫瘍刺激に反応し、腫瘍特異的な腫瘍特異的なインターフェロンγの産生を認めた。これら一連の手法をマウス同種移植モデルで行うための前処置として放射線の全身照射のコンディションを検討したところ、脾細胞、骨髄有核細胞の回復は800〜1000Rの照射が最適であることが確認された。同モデルで行った同種樹状細胞による治療は、肺転移モデル、皮下腫瘍移植モデルにおいて高い抗腫瘍効果を発揮することが明らかとなった。
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