研究概要 |
肺癌細胞株で同定された染色体3p21.3領域の共通ホモザイガス欠失領域に存在する、3つの腫瘍抑制遺伝子(RASSF1A, BLU, SEMA3B)が不活化される機構について検討した。138例の外科手術症例にてRASSF1Aは32%,BLUは30%,SEMA3Bは47%においてプロモーター領域の高メチル化を認めた。これらの遺伝子の高メチル化は比較的同時に生じていた。3p21.3アリル欠失をD3S1568およびD3S1621マーカーを用いてGeneScan法にて検討した。マイクロダイセクション法にて138症例の外科手術標本スライドから腫瘍細胞のみを抽出し解析しアリル欠失は93例のインフォーマティブな症例のうち54例(58%)で認めた。さらにRASSF1A下流遺伝子のSM22およびSPARC遺伝子発現をノーザンブロット法で検討したところ、RASSF1A高メチル化症例では有意に発現低下が認められた。 肺癌細胞株NCI-H2882における染色体2p24ホモザイガス欠失領域について解析した。132症例の外科手術標本に関してD2S2150マーカーを用いてアリル欠失を検討した。64例のインフォーマティブな症例のうち26例(41%)に欠失を認めた。この欠失領域に存在するRhoB遺伝子について遺伝子変異解析を行ったが、体細胞突然変異は認められなかった。一方、ノーザンブロット法にてRhoB遺伝子発現を肺癌細胞株25例で検討したところ、RhoBの発現低下を高頻度に検出し、腫瘍抑制遺伝子候補遺伝子であることが示唆された。免疫組織学的解析にて118例の外科手術症例を検討し、扁平上皮癌では74%、腺癌では14%の発現低下が認められ発現低下は組織型の差にも関与していることが示唆された。
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