研究概要 |
肺癌で高頻度染色体欠失が認められる8p11領域について外科手術症例80例を用いて解析した。D8S1180マーカーにて検討し38%の症例でアリル欠失を認めた。この領域に存在するSFRP1遺伝子の発現解析を行い、48%の非小細胞肺癌で発現低下を認めた。SFRP1遺伝子発現ベクターを細胞株に導入したところ、コロニー形成の低下が認められ、SFRP1は肺癌における腫瘍抑制遺伝子であることが強く示唆された。 3p21.3領域の共通ホモザイガス欠失領域に存在する、3つの腫瘍抑制遺伝子(RASSF1A,BLU,SEMA3B)の不活化機構を検討した。138例の外科手術症例にてRASSFIAは32%,BLUは30%,SEMA3Bは47%においてプロモーター領域の高メチル化が認められた。3つの遺伝子の高メチル化は比較的同時に生じていた。3p21.3アリル欠失をD3S1568およびD3S1621マーカーを用いて検討した。138症例の外科手術標本で解析しアリル欠失は58%の症例で認められた。RASSF1Aの下流遺伝子のSM22及びSPARC遺伝子発現がRASSF1Aメチル化症例では有意に低下していた。 肺癌細胞株NCI-H2882における2p24ホモザイガス欠失領域が約3.7MBであることを明らかにした。128症例の外科手術標本にてD2S2150マーカーを用いて検討し40%の症例でアリル欠失を認めた。この領域内に存在するRhoB遺伝子の発現を、ノーザンブロット法を用い肺癌細胞株20例にて、免疫組織学染色にて外科手術症例112例にて検討したところ、高頻度にRhoB遺伝子に発現低下を検出した。特に、腺癌より扁平上皮癌において発現低下が高頻度に生じていることを明らかにした。
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