研究概要 |
気管支喘息,肺高血圧症、肺線維症などの炎症性肺疾患では凝固・線溶系が病態形成の中心的役割をはたしていると考えられている。著者らは炎症性肺疾患患者では、トロンビン等の血液凝固因子の産生や活性化が亢進し、プロテインC凝固制御系の機能が低下していることを報告してきた。最近、トロンビンはプロテアーゼ活性化受容体のPAR-1を介して細胞障害を惹起し、他方、活性化プロテインCもPAR-1を介して細胞障害を保護することが示唆された。本研究では、PAR-1ノックアウト、thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor(TAFI)ノックアウト、Wild-typeの3種類のマウスを用いて肺線維症モデルを作製し、炎症性肺疾患におけるPAR-1及びTAFIの関与を検討した。背部の皮下に埋め込んだ浸透圧ポンプを用いて3種類のマウスにブレオマイシンを3週間皮下投与し、肺線維症モデルを作製した。その結果、PAR-1ノックアウト及びTAFIノックアウトマウスでは肺組織中のコラーゲンとhydroxyprolineの濃度がwild-typeマウスにくらべ有意に低下した。また、PAR-1ノックアウト及びTAFIノックアウトマウスでは気管支肺洗浄液・血液中のTNF-α,IL-1β,TGF-β1の炎症性サイトカインと凝固系の活性化のマーカーであるthrombin-antithrombin複合体の濃度はwild-typeマウスにくらべ有意に低下した。この結果よりPAR-1ノックアウト及びTAFIノックアウトマウスではブレオマイシン投与にて本来おこる肺胞腔内凝固能の亢進と引き続く炎症・線維化が有意に抑えられることが判明した。
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