喘息の病態には共刺激分子を介した免疫制御系が関与していると思われる。我々はB7-DCとよばれる共刺激分子に注目し、マウス喘息モデルおよびヒト培養気道上皮を用いてB7-DCの役割を検討した。 (マウス喘息モデルを用いたB7-DCによる喘息制御機構の解明) マウス喘息モデルに抗B7-DC中和抗体を投与すると喘息反応が増強し、この増強はIFN-γノックアウトマウスや抗IFN-γ中和抗体投与マウスではみられないことから、B7-DCはIFN-γ産生を介して喘息を負に制御している可能性を示した。また抗原吸入によって気道の樹状細胞にB7-DCの発現が誘導された。この誘導はIL-13阻害剤を投与したマウスでは著明に抑制された。B7-DCによる調節には樹状細胞における他の共刺激分子(4-1BBLやCD80/86)誘導を介した間接的機序が報告されているが、我々の検討では抗原曝露後の樹状細胞で4-1BBLやCD80/86の発現誘導は認められなかった。すなわち、IL-13によって気道に誘導されたB7-DCは4-1BBLやCD80/86を介しない機序で喘息反応を調節するというフィードバック機構を担っていることを明らかにした。 (ヒト培養気道上皮におけるB7-DC発現機序の解明) IL-13やウィルス関連分子である二本鎖RNAがヒト気道上皮におけるB7-DCの発現を亢進し、その発現はステロイド抵抗性であることを示した。この発現にどのような細胞内シグナル伝達系が関与しているかをキナーゼ阻害剤を用いて検討した。B7-DC発現はP13キナーゼ阻害剤によって著明に抑制され、p38MAPキナーゼ阻害剤およびJNK阻害剤で部分的に抑制されたが、ERK阻害剤では抑制されなかった。これらの結果は同時に測定したIL-8やRANTESなどの産生に対する各種キナーゼ阻害剤の抑制効果と一部異なっていた。すなわち、気道上皮におけるB7-DCの発現はケモカインにおけるそれとは一部異なるキナーゼ系を介する機序によって気道の免疫制御に関わっている可能性が示唆された。
|