研究計画書に従い、血清型5型および5/3型のVEGFプロモーターを使用した制限増殖型アデノウィルス(Ad5VEGFE1とAd5/3VEGFE1)をHEK293細胞に共感染させてモザイク化アデノウィルス(AdmsVEGFE1)を作成した。大量調整の後、定法に従いCsCl_2溶液を用いて超遠心による濃縮を行い、その後透析によってウィルス溶液を精製した。回収したウィルス溶液の濃度は10^9〜10^<10>pfu/mLで収率は比較的良好であった。in vitroの検討については平成16年度の実績報告書に記載したとおりである。今年度はin vivoの実験を中心に実施し、まず5型アデノウィルスに感受性の高い癌細胞株C33A、NCI-H157と3型アデノウィルスに感受性の高い癌細胞株SKOVのヌードマウス皮下における腫瘍形成能について調べたところ3つの細胞株はいずれも良好な腫瘍形成を示した。そこで、これらの皮下腫瘍に対し3種のアデノウィルスAd5VEGFE1、Ad5/3VEGFE1、AdmsVEGFE1を10^9pfu腫瘍内に直接注入し、その後の腫瘍増殖について観察した。その結果、in vitroにおける実験結果と同様にC33A、NCI-H157に対してはAd5VEGFE1、AdmsVEGFE1が高い抗腫瘍効果を発揮し、SKOV株に対してはAd5/3VEGFE1、AdmsVEGFE1の効果が優れていた。しかしながら、AdmsVEGFE1の効果はいずれの細胞株においてもAd5VEGFE1とAd5/3VEGFE1の効果の中間に位置しており、in vitroの実験結果と相違がみられた。その理由としてin vivoにおける腫瘍内部では初回の感染後の増殖効率がin vitroよりも低いため十分なモザイク化が起こらなかったものと考えられた。また非増殖型ウィルスとの共感染でもモザイク化による感染性の増強がみられ、さらに非増殖型HSV-tkウィルスとの共感染ではHSV-tk遺伝子の増幅がみられGanciclovirによる腫瘍抑制効果が増強した。以上の結果から改変アデノウィルスは増殖型ウィルスにおいてもその抗腫瘍効果の増強に有用と考えられた。
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