研究概要 |
日和見感染症や慢性感染症で問題となる緑膿菌に対する治療は、薬剤耐性菌のことが多く、治療に抵抗性である。一方で、抗菌活性が全く見られないマクロライド系薬が緑膿菌による慢性気道感染症の患者の一部には、有効であることが報告されている。原因として、菌側因子として、病原因子の抑制効果が報告されていたが、我々は、マクロライド系薬が、Bactericidal effectを菌の定数増殖期に持つことを発見し、また、そのマクロライド感受性が緑膿菌の定数感知機構であるquorum sensing systemに依存していることを見出した。 本年度の研究では、quorum sensing systemによりコントロールされマクロライド感受性に関連する遺伝子を同定した。同定の結果、第3のquorum sensing systemと言われているPseudomonas qquinolone signal合成酵素遺伝子群であるpqsA-Eオペロンの発現がマクロライド感受性に極めて密接に関連していた。そこで、さらに、このオペロンの発現機構を明らかにするために、本オペロンのプロモーター領域とβ-galactosidase遺伝子を繋いだpqsA'-lacZを緑膿菌遺伝子に挿入した株を作成し、その株に対するrandom transposon mutant libraryを作成して、β-galactosidase活性の低下した株を選択し、transposonが挿入された遺伝子を同定した。同定した27遺伝子にはベン毛に関連する遺伝子,ヌクレオチド生合成の遺伝子、代謝に関連する遺伝子、薬物耐性に関連する遺伝子,細胞分裂に関連する遺伝子、役割の分からない遺伝子、PQS生合成遺伝子(pqsA, pqsB, pqsC, pqaD, pqsH, pqsR)が含まれていた。これらの遺伝子が機能しないと、定数増殖期にマクロライド耐性を示す可能性が示唆された。
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