Transfroming growth factor-alpha(TGF-α)やheregulin-beta1(HEG-β1)への暴露により細胞増殖の増加を認める肺がん細胞株A549において、Cdc25B蛋白はTGF-αやHEG-βへの暴露後一時間以内に発現上昇を認められたが、Cdc25A蛋白の発現誘導は認められなかった。さらにCdc25B発現上昇はターゲットであるCdk1の脱リン酸化を伴っており、この反応はCdc25の阻害剤であるDA3003-2による前治療により、Cdc25B蛋白発現のレベルを変化させることなくA549の細胞増殖やCdk1の脱リン酸化が阻害された。Cdc25B遺伝子はTGF-αやHEG-β1曝露後の発現誘導を認めず、Cdc25B蛋白はcyclohexamideの前処理により発現誘導を認めないことから、増殖因子曝露後のCdc25B蛋白発現誘導はpost-translationalな変化であることが推察された。さらにTGF-α曝露のCdc25B蛋白の発現誘導はepidermal growth factor recepotor(EGFR) tyrosin kinase阻害剤であるAG1478で、HEG-β1曝露のCdc25B蛋白の発現誘導はHer2/neu tyrosin kinase阻害剤であるAG879でそれぞれ阻害され、またMEK阻害剤であるU0126は両増殖因子によるCdc25B蛋白の発現誘導を阻害することから、増殖因子曝露後のCdc25B蛋白の発現誘導はMAPKのsignal pathwayを介して起こっていることが示された。以上の結果から増殖因子曝露後のCdc25B蛋白発現誘導はMAPKのsignal pathwayを介して起こり、EGFRやHer2/neuによる細胞増殖における細胞周期調節に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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