慢性閉塞性肺疾患における肺高血圧症の治療薬としてのカルシウム拮抗剤・ACE阻害薬等の臨床的有用性に対して、二次性肺高血圧症の進展に関与する候補遺伝子多型の観点から、その慢性効果を明らかにした。また、今回の二次性肺高血圧症の患者に対する肺循環諸量・末梢骨格筋への酸素運搬能や組織の酸素化能を指標とすることにより、当症例群でのカルシウム拮抗剤・ACE阻害薬等の至適量の決定に結び付けた。このような観点は、有効な医療資本の利用という点からも、極めて有益な知見と思われる。次に、二次性肺高血圧症の患者の治療薬として検討されていない薬剤であるアンギオテンシンII受容体拮抗薬の慢性効果についても検討した。こうして、我々は、アンギオテンシンII受容体拮抗薬の、慢性閉塞性肺疾患における二次性肺高血圧症の進展予防に対する有用性を明らかにした。次に、一年間の在宅酸素療法を施行されたCOPD患者に対して、その慢性効果を検討した。この際にその急性効果を顕著に示した患者の効果持続性についても検討を加えた。また、全身の血行動態・肺循環動態の運動に伴う変動に対する各々の候補遺伝子多型による、長期間の酸素療法における慢性効果の差異を安静時と運動時に分けて検討し、とりわけ、安静時と運動時における末梢骨格筋への酸素運搬能・組織の酸素化能に及ぼす影響を示した。このプロトコールより得られた知見から、在宅酸素療法の二次性肺高血圧症の進展予防効果を明らかなものとした。さらに、我々がこれまでCOPD患者に対して、一様に施行してきた長期間の酸素療法に対しても、遺伝子多型により、その投与量・期間の決定において再考を促すものとなる可能性を示したのである。
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