研究概要 |
平成16年度に行なったin vitro実験がIL-5産生抑制に一定の効果を認めたことより、平成17年度は喘息モデルのマウスを用いた実験を行なった。BALB/cマウスを卵白アルブミン(OVA)で感作し、脾臓からCD3陽性T細胞を分離培養しGATA-3 decoy oligoをin vitroでtransfectionを行なった。transfectionのために使用するtoolとしてhemagglutinating virus of Japan(HVJ)を使用したところtransfection効率が飛躍的に高まった。新たなBALB/cマウスをOVAで感作し、先のdecoyをtransfectionされたCD3陽性T細胞をそのマウスの腹腔内へ投与した。その後抗原チャレンジを行ないメサコリンに対する気道抵抗の変化を測定し、さらに気管支肺胞洗浄(BAL)液を回収しIL-5濃度の測定を行なった。しかしながらGATA-3をターゲットにしたdecoy oligoは、気道抵抗の低下やIL-5濃度の低下を認めるまでには至らなかった。したがって、次にTh2-type cytokineを産生する上で特に重要な転写因子であるNF-ATをターゲットにdecoy oligoを作成し上述のごとく実験を繰り返したところ、in vitroにおいてはGATA-3 decoyで抑制効果を認めたIL-5のみならずIL-4,IL-13といったTh2-type cytokine産生を抑制し、さらにin vivoにおいてもNF-AT decoy oligoはマウスの気道抵抗を低下させ、かつBAL中のTh2-type cytokine濃度を有意に低下させた。BAL中のCD3陽性T細胞を回収しその核内タンパクを用いてgel shift assayを行なったところdecoyをtransfectionされた群において、NF-ATTタンパクとIL-4,5,13のプロモーター部とのbinding affinityは低下していた。これらのことよりNF-AT decoy oligoはCD3陽性T細胞内で転写因子NF-ATとTh2-type cytokineのプロモーター部とのbinding affinityを低下させることによりcytokine産生を低下させていることが証明され、実験的喘息モデルにおいてNF-AT decoyは効果を認めた。また、平成16年度の実験で明らかにしたごとくdecoy oligoをリボンの形にすることによりDNA分解酵素に対して抵抗性が生じ、直鎖上のdecoy oligoに比しin vivoにおいても有意にその効果を持続させることが可能となりtransfection後2週間にわたり気道過敏性の上昇を抑制し得た。
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