研究概要 |
1.マウス、ラットの炎症性肺疾患モデルにおける、肺局所幹細胞マーカーの発現、及び幹細胞のホーミングに関連するメディエータの解析: 1)マウス塩酸吸入急性肺損傷モデル:種々の濃度、量の塩酸を経気道的に噴霧し、肺の病理組織所見を経時的に観察したところ、0.5N塩酸投与群で再現性よく肺水腫が認められ、同濃度が本研究の至適濃度と判断された。 次に、正常、急性肺損傷時の局所幹細胞動態解析を、主にMusashi-1をマーカーとして行った。その結果、肺傷害の惹起後、経時的に肺気管支領域を中心としたMusashi-1陽性細胞の増加を認めた。Musashi-1は元々神経領域の幹細胞マーカーとして見いだされたが、その後他臓器の上皮幹細胞にも発現していることが確認されており、肺上皮細胞傷害後の組織修復・再生に局所幹細胞が関与していることを示唆する所見と考えた。 2)ラット放射線肺臓炎/肺線維症モデル:MDC、TARCの肺局所産生充進を確認し、その幹細胞集積、活性化への関与の検討を開始した。 3)マウス熱傷後敗血症性急性肺損傷モデル:熱傷前負荷群で細菌内毒素投与後の肺組織中MDC、TARC値が有意に高値をとったため、現在CCR4拮抗薬の影響を検討中である。 2.マウスを用いた、肺の多能性幹細胞、side population(SP)細胞分離技術の確立と、同法を用いたin vivo肺SP細胞定量: 肺組織からのSP細胞の分離技術を確立するため、肺スライスの方法、使用する組織融解酵素(コラゲネース、ジェラチネース)の選定と至適濃度、処理時間、などを変えて、幹細胞収率が最も高い分離条件を探索した。SP細胞の収率は0,05〜0.8%と非常に少なく、かつばらついていたため、正常時と肺傷害時のSP細胞数の変化を本解析法で明らかにできなかったが、上記(1)と同様肺における幹細胞の存在を明らかにすることができた。
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