研究概要 |
Endostatin(ED)は18型コラーゲンのC末端断片であり、血管内皮細胞に対する強い増殖抑制効果を有する。ED受容体は血管内皮細胞に特異的に発現するといわれていたが、我々の現在までの研究の結果、マウスの非小細胞肺癌細胞株(LLC)上には未知のED受容体が存在することが示唆された。そこで本研究においては、A)LLC上に発現が示唆されるED受容体を同定し、B)そのED結合ドメインを明らかにすることで肺癌細胞に結合せず、より血管内皮細胞の増殖能を特異的、かつ強力に抑制するED断片(ED/frag)を作成することを目的とした。本研究の初年度ある平成16年は、まず、LLC上に発現が予想されるED受容体の同定と機能解析を行った。 1)接着試験:recombinant EDを96穴平底プレートに固層化し、EDに対する接着性を観察したところ、LLCはEDに対して有意な細胞接着性を示した。 2)FACS:フローサイトメトリー(FACS)で報告のあるED受容体(Itegrin av, a5,b1,b3)の発現を確認したところいずれも発現することが明らかになった。また、recombinant EDで前処置した競合試験の結果、integrin a5がLLC上のED受容体である可能性が示唆された。 3)細胞増殖試験:recombinant ED(10μg/ml)はLLCのin vitroでの細胞増殖を抑制した。 4)細胞遊走試験:recombinant ED(10μg/ml)はvitronectinによるLLCの遊走活性を阻害した。 今後、LLC上に存在するED受容体であるintegrin a5を介したシグナル伝達の機序についても解析予定である。また、上記B)については、大腸菌によるED融合蛋白作成に難渋しているが、手法を変え研究を継続予定である。
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