研究概要 |
肺リンパ脈管筋腫症(LAM)は、肺、腎、体軸リンパ節等に平滑筋様細胞(LAM細胞)が不連続性に増殖する疾患である。LAM細胞は、癌抑制遺伝子の一種であるTSC遺伝子の変異により増殖・分化に異常を生じ形質転換した一種の腫瘍細胞である。昨年度は、LAM症例の乳糜胸腹水中にリンパ管内皮細胞に被われたLAM細胞クラスター(LCC)を同定し、LCCからLAM細胞の初代培養に成功し、LOHを有する大型のLAM細胞とLOHを示さない心型紡錘形細胞の2種類の細胞を分離した。2種類の細胞は増殖因子(17・-estra diol)、増殖抑制因子(rapamycin, PDGF-R blocker, EGF-R blocker)に対する反応が異なっていた。培養LAM細胞をヌードマウスの皮下、腹腔、肺内などの部位に2種類の細胞を単独で、混合で、あるいは乳糜液に懸濁させたLAM細胞クラスターのままで、のように様々な方式で移植実験を試みたがマウスに肺病変を再現することはできなかった。一方、本年度は病理学的検討症例数を増やし、乳糜胸腹水6例、剖検例5例の病理学的検討により、乳糜液中のLAM細胞クラスターが全例で検出されること、各部位(肺、リンパ節)のLAM病巣ではリンパ管新生の亢進と新主リンパ管内にLCCを検出しうること、体軸系リンパ節や胸管には全例でLAM病変が検出されることを明らかにし、リンパ管系や肺へのLAM転移病巣の形成にリンパ管新生とそれに伴うLCC形成がLAMの転移機構の中心的役割を果たすとの仮説を提唱した。
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