研究概要 |
ラットを1回換気量30ml/kg体重,PEEP0cmH_20で3時間陽圧換気すると,肺胞腔への好中球遊走,浸出液貯留などを特徴とするventilator-induced lung injury (VILI)が認められた.あらかじめラット気管内にエンドトキシン(LPS,1mg/kg体重)を注入してから同様の陽圧換気を行うと,VILIは著明に増悪した.VILIを起こしたラットのBALF中のNO_2,NO_3濃度は,自発呼吸群や1回換気量10ml/kg体重群に比べて有意に増加していた. ラットにあらかじめiNos特異的拮抗薬であるONO-1714を前投与しておくと,無処置のラットVILI肺に比べ量依存性に組織学的に肺傷害(VILI)の所見は軽減し,BAL中の好中球の増加も抑制された.BAL中のNO_2,NO_3濃度も有意に低下した. 活性酸素除去薬(superoxide dismutase, SOD)を前投与しておくと,組織学的に肺傷害(VILI)の所見は不変であったが,BAL中の好中球の増加は抑制傾向であった.BAL中のNO_2,NO_3濃度は低下傾向であった. VILIを起こした肺組織では無処置群に比べ有意なiNOS蛋白の発現増強とiNOS mRNAの発現増強が見られた. ラット肺からII型肺胞上皮細胞を単離し,30〜50cmH_2Oの陽圧を15/分,3時間負荷すると,培養上清中のNO_2,NO_3濃度は負荷なしの群に比べて有意に増加した.無処置に比ベアポトーシスは有意に増加し,NF-κBの活性化の程度も強くなった. 単離II型細胞をあらかじめONO-2387で前処置した時,圧負荷に対するアポトーシス誘導の増強は有意に抑制され,NF-κBの活性化増強も抑制傾向が見られた. 以上の結果から,細胞伸展変形などで起こる肺損傷にはiNosの発現と引き続くNO_2,NO_3産生増加が関わることが示された.
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