研究概要 |
慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)及び肺気腫の動物モデルとしてタバコを毎日12時間かつ6ヶ月以上喫煙させて作製する喫煙モデルや気管内へのエラスターゼやパパイン等の投与が古くから知られている。しかしながらこれら古典的COPD及び肺気腫の動物モデルは世界中でほとんど使われていない。そのため新規COPDマウスモデルが求められている。兵庫医大の中西博士や我々によってIL-18はIFN-γ産生誘導だけでなくTh2サイトカイン(IL-4,IL-5,IL-13etc)を誘導することが判明した。これらの結果は肺に特異的に炎症性サイトカイン(IL-18,IFN-・)を発現すると肺気腫、肺障害が誘導される可能性がある。そこでヒト肺サーファクタントプロモーター(SPC)を用いて恒常的に肺特異的発現する炎症性サイトカインIL-18トランスジェニック(TG)マウスを樹立した。肺に恒常的にIL-18を発現するSPC-IL-18TGマウスの肺は間質部に著明な炎症細胞浸潤及び大型肺胞マクロファージを伴った一部肺胞構造の破壊による肺気腫状の変化が病理学的に見られる。SPC-IL-18TGマウスの心臓は著明な右心不全つまり右心室、右心房の拡大、うっ血と心筋の肥厚が病理学的に見られる。SPC-IL-18TGマウスの肝臓は著明なうっ血が病理学的に見られる。一方、コントロールのマウスにはTGマウスで見られる異常所見が全く見られない。また、このようにして作製したTGマウスは、約5から10週以降に肺気腫及び循環不全(肝不全、心不全)が発症することが確認された。ヒトCOPDの原因はタバコである。我々の研究結果はタバコが原因による肺局所の過剰なIL-18産生がCOPDを誘導及び悪化することが示唆された。将来、caspase-1(ICE)阻害薬やIL-18阻害薬、IL-18受容体阻害薬が新規COPD治療薬になる可能性がある(論文投稿中)。
|