腎生検にて微小変化型ネフローゼ症候群、もしくは、巣状糸球体硬化症と診断した、ステロイド薬等の治療を受けていない症例を対象症例とした。対象症例よりヘパリン加静脈血を採取、重層遠心法にてリンパ球を分離し、Rhodamine123(Rh123)を培地に加え、15分間培養。洗浄後、Rh123非含有の同培地にて、verapamil添加と非添加のものとで120分間培養した。洗浄後、Phycoerythrin標識mouse-IgG抗ヒトCD3抗体にて染色し、Flow cytometerにてRh123含有細胞率を計測した。 治療前(ステロイド薬未使用)と初期治療後(ステロイド薬投与中)を比較した場合、末梢血リンパ球数は初期治療後で有意な低値(P<0.01)を示していたが、末梢血リンパ球中のCD3^+細胞の割合、およびRh123のCD3^+細胞内への取り込み(verapamil添加培養下)は、両群間に有意差を認めなかった。Rh123細胞外排泄試験の検討(verapamil非添加培養下)においては、初期治療後でCD3^+細胞中のRh123^+細胞の割合は有意な低値(P<0.05)を認めた。すなわち、CD3^+細胞中、Rh123が細胞外へ流出した細胞の割合が有意に高値であった。一方、維持治療中に再発した症例(ステロイド依存性群)と再発しなかった症例(ステロイド非依存性群)とにおけるCD3^+細胞中のRh123^+細胞の割合はステロイド依存性群で有意な低値(P<0.05)を認めた。 以上より、T細胞における多剤耐性蛋白質などの薬物トランスポーターの発現はステロイド薬投与の有無またはその投与量が影響する可能性が示唆された。また、ステロイド依存性は、この薬物トランスポーターの発現が増強し、ステロイド薬が細胞内に取り込まれて薬理効果を示す前に細胞外に排泄されることによりもたらされている可能性が示唆された。
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