本研究の目的は、尿検体を用いた新しい非侵襲的腎疾患診断法を確立することである。本年度の研究成果は、腎疾患患者の尿検体を有形細胞分析(フローサイトメトリーによる赤血球形態・白血球表面マーカー解析)、高感度検出システムを用いた尿蛋白泳動分画解析と腎生検所見などのデータを集積、分析した結果、腎疾患の病態を5型に分類できることを見出したことである。これは国際学会において発表し(Sakatsume M)、特許申請を行った。その内容は、A型(尿細管性尿蛋白、エフェクター型免疫細胞)尿細管間質性腎炎、B型(糸球体性尿蛋白)微小変化型、膜性腎症、糸球体肥大、C型(糸球体性尿蛋白、エフェクター型免疫細胞、変形赤血球)IgA腎症、ANCA関連腎炎、D型(混合性尿蛋白、エフェクター型免疫細胞、変形赤血球)間質障害を伴うANCA関連腎炎、E型(血漿型尿蛋白、非エフェクター型免疫細胞、非変形赤血球)特発性腎出血、の5型分類である。 また別に、尿蛋白分画電気泳動において、疾患特異的なパターンをAlpha1分画に確認し、尿中の蛋白分解酵素濃度との関連性を検討した(Machii R)。現在、alpha1分画を含む、dominantに検出された分画をMALDI-TOF型質量分析装置を用いて解析中である。今後、疾患特異性のある尿蛋白の同定を試みる。 さらにDNA chipを用いた腎炎モデルの発現遺伝子プロファイリングの結果から、腎炎特異的発現遺伝子を同定しているので、尿中の遺伝子産物の検出とその疾患特異性について検討を行っている。腎疾患特異的な指標としての診療への応用の可能性を検討していく予定である。
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