糸球体上皮細胞の頂側に発現している陰性荷電分子ポドカリキシンは、アダプター蛋白(エズリン、NHERF2)を介して細胞内骨格と密接に繋がっており、腎臓の濾過機能を保つのに寄与している。その結合・解離メカニズムを明らかにするため、培養糸球体上皮細胞を用いてポドカリキシン・アダプター蛋白複合体に対するアンジオテンシンII(AII)の役割を検討した。続いて強制発現系を用いてアダプター蛋白・アクチン細胞内骨格複合体に対するポドカリキシンの役割を検討した。 1 培養糸球体上皮細胞の形質評価 これまで糸球体上皮細胞の安定した培養細胞系がなかったが、Dr.Mundelによりマウス由来温度感受性糸球体上皮細胞が樹立された。同細胞を供与して頂き、まず生体内の糸球体上皮細胞と同様の機能を発現しているかを評価した。ハイマン腎炎責任抗原メガリンがこの分化状態の培養細胞に発現し、かつエンドサイトーシス受容体として生体内と同様に機能していることを確認した。 2 培養糸球体上皮細胞におけるポドカリキシン・アダプター蛋白・アクチン複合体の相互作用に対するAIIの効果 AII、AII拮抗薬添加の有無によりポドカリキシンと免疫共沈するアダプター蛋白(エズリン、NHERF2)の量を検討したところ、AII依存的にこれらの複合体が解離することが明らかとなった。 3 ポドカリキシンの強制発現によるアダプター蛋白・アクチン複合体の再構築 MDCK培養細胞にポドカリキシンを強制過剰発現するとアダプター蛋白の再構築(頂側への再分布)が認められた。また、細胞内骨格のシグナルに関与するRhoAが活性化していた。これらよりポドカリキシンを強制発現するとRhoAが活性化され、エズリン、NHERF2の頂側への再分布が行われると考えられる。
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