研究概要 |
Interferon-inducible protein-10(IP-10)/CXCL10およびその受容体CXCR3を介する腎障害時の再生ならびに発生への関与について検討した. IP-10ならびCXCR3はマウス胎児期において腎組織内に発現がみられることが判明した.一旦,マウス腎が成熟する生後1週以降ではほとんど発現がみられなくなった.一方,虚血再環流障害モデルを作成したところ,IP-10ならびにCXCR3ともに間質浸潤細胞ならびに尿細管上皮細胞に発現を認めた.この新たに発現がみられるIP-10/CXCR3の役割を検討する目的で,虚血再環流障害モデル作成時に抗IP-10中和抗体投与を行った.その結果,抗IP-10中和抗体投与群において,対照群と比較して再環流後4日で尿細管上皮細胞の再生が増加することが判明した.さらにこの虚血再環流モデルにおいて,尿細管上皮細胞増殖の亢進がKi67陽性細胞数増加より示された.一方,このモデルの特徴である尿細管壊死は抗IP-10中和抗体投与による差異はみられなかった.このIP-10/CXCR3の腎障害時の役割をさらに検討する目的で,培養マウス尿細管上皮細胞を用いてwound healing testを施行した.その結果,抗IP-10中和抗体投与によりwound healingが促進することが示された.さらに,抗IP-10中和抗体共培養によりKi67陽性細胞で示される細胞増殖が促進された.これらの結果より,抗IP-10中和抗体投与により腎尿細管上皮細胞の再生ならびに増殖亢進がin vivoならびにin vitroで確認された.以上より,IP-10/CXCR3は腎発生に関与することに加えて,腎障害時に発現が亢進するIP-10/CXCR3は腎尿細管上皮細胞の再生や増殖に関与することが推測された.
|