研究概要 |
A.研究目的 糖尿病性腎症は、新規透析導入患者の原疾患として増加の一途をたどっている.早期治療を行えば腎症は可逆的と考えられ、腎症の早期診断へのニーズは高い.早期診断法マーカーとして、マルチプレキシンコラーゲンである、XV型とXVIII型コラーゲンの有用性を検討することを目的とした。 平成17年度も引き続き,(1)新規特異抗体の確立,(2)新規抗体を用いた尿中マルチプレキシンの測定方法の確立,(3)糖尿病性腎症腎組織でのマルチプレキシン沈着の免疫組織学的解析を目指した. B.方法 ◆マルチプレキシンコラーゲン特異抗体の確立 既存の単クローン抗体に加え,より反応性の高い単クローン抗体とウサギ抗体を確立する. ◆サンドイッチELISA法による尿中XV型コラーゲン測定法の開発 すでにXVIII型コラーゲンの測定系は良好に機能している。XV型コラーゲンの測定系に利用できる単クローン抗体とウサギ抗体を用いて確立する. ◆糖尿病性腎症におけるマルチプレキシンコラーゲンの免疫組織学的解析 昨年度の6症例に加え、糖尿病ステージの異なる腎組織内についてマルチプレキシンを解析する.すなわち,2型糖尿病の正常アルブミン尿期、微量アルブミン尿期、顕性蛋白尿期の症例である. C.結果とD.結論 (1)2回目に作成した特異XV型コラーゲンウサギ抗体にも明らかな非特異反応が認められたため,XV型コラーゲンのサンドイッチELISA法による解析ができない状態である。現在3度目の抗体作製を試みている。しかし,(2)XVIII型サンドイッチELISA法での尿中値の測定は順調に進み、糖尿病腎症の進行と測定値の相関(特にクレアチニン値の逆数との相関)を認めた。(3)糖尿病性腎症におけるマルチプレキシンコラーゲンの免疫組織学的解析は順調に進んだ。病期の異なる18症例について腎組織内にマルチプレキシン沈着が進行することを明らかにした。 尿中XVIII型コラーゲンの測定結果は2006年度の日本腎臓学会総会で、腎組織内の沈着についての結果は2006年の目本糖尿病学会において発表する。尿中XV型コラーゲン測定法は、残念ながら追加抗体の開発が遅れているため、解析自体が滞っている.
|