【動物実験】 ラットに対してpuromycin aminonucleoside(PAN)を投与し微小変化型ネフローゼ症候群を作成し、経時的なウログアニリン(UGN)の動態を測定した。結果、Na利尿期の直前にUGNの尿中排泄ピークを認め、UGNがNa利尿期の引き金となっている可能性が考えられた。血漿UGNもNa利尿期には有意に増加していた。また、ラットの片腎にのみPANを還流し、7日後還流腎と非還流腎からの尿により尿中UGNを測定した。還流腎からの尿では、非還流腎からの尿と比較して、尿中UGN排泄と尿中Na排泄量が有意に増加しており、またUGNのmRNAの増加もみられた。この実験での血漿ANPは著変なく、UGNがネフローゼ時のNa排泄に大きく関与することが示唆された。またネフローゼのNa貯留時に腹腔内より持続的にUGN投与を行ったところ、Na貯留の軽減を認め、UGNがネフローゼ症候群における治療薬としての可能性を持っていることが示された。同量のUGNを正常ラットに投与したところ明らかなNa排泄増加は認めず、病態によりUGNへの反応性が変化していることが示唆された。ネフローゼ症候群におけるUGNの活性化の機序については現在検討中である。 【臨床研究】 当院に入院した微小変化群および巣状糸球体硬化症によるネフローゼ症候群患者(n=7)の尿中、血中UGN排泄量を経時的に測定した。尿中Na排泄量によりNa貯留期、利尿期に分け、尿中UGN排泄量を比較検討したところ、Na貯留期よりも利尿期で有意に高値であった。Na貯留期と利尿期の血漿UGN濃度には有意差を認めなかった。ネフローゼ症候群患者の尿中UGN排泄量はNa利尿期に一致して増加していたが、血漿UGN濃度はNa貯留期と利尿期で有意な差はみられなかったことより、腎局所で産生されたUGNがNa利尿に関与している可能性が考えられた。
|