糖尿病性腎症のモデルとしては、8週齢の雄性Wistarラットにストレプトゾトシン45mg/kg体重を1回静注することにより糖尿病を惹起した(STZ群)。クエン酸バッファーのみ注射したラットを対照群とした。STZ群では注射1週以内に血糖上昇がみられ、以後インスリンを用いずともケトーシスを起こさずに、24週まで観察できた。尿蛋白は注射後8週過ぎから増加したが、血清クレアチニンは24週まで低下したままであった。また腎組織にて糸球体硬化病変は生じていなかった。したがってSTZ群は糖尿病性腎症でも、初期の糸球体過剰濾過の時期に一致するモデルと考えられた。 まずアディポネクチンの血中濃度は、STZ群で8週でも24週でも低値であった。アディポネクチンに対する抗体(昭和大学薬学部中野博士から供与)を用いた免疫組織学的検討では、8週の対照ラットにおいても糸球体が染色されたが、24週での染色性と有意差はなかった(NIH Imageにて定量)。STZ群では24週で約2倍に増加した。いずれの群も染色局在は内皮細胞とメサンギウム細胞であり、内皮細胞とメサンギウム細胞の特異的マーカーであるPCAMあるいはThy-1に対する抗体との二重染色(Bio-Rad)で確認された。一方、マウスアディポネクチン受容体に対する抗体でも同様の染色性と発現変化が見られた。Autocrine的な意味付けがある可能性がある。 さらにRT-PCRでも調べたが、明らかな変化は認めなかったことから、遺伝子レベルの変化は大きくないかもしれない。ただ今後Northernブロットでも検討する必要がある。
|