MP4およびBMP7は腎の初期発生に重要であるが、これらのBMPは糸球体においても強い発現を持続して示すことから、糸球体の発生あるいは構造維持に何らかの機能を有すと考えられる。本研究ではBMPの糸球体発生および糸球体障害時における役割を検討する目的でBMPの内因性の阻害蛋白質であるnogginをnephrin promoterの調節下強制発現させたtransgenic mouse (Nep-Nog Tg)を作成し、構造解析を行った。また本年度はこのTgに片腎摘出あるいは抗糸球体基底膜抗体(GBM-Ab)を投与し、糸球体障害時におけるBMPの機能を検討した。Tgでは糸球体上皮細胞にのみnogginの発現がみられ、発現レベルが比較的強い約3割のTgでは糸球体の発生異常がみられたが、残りの7割では腎の構造異常は認めなかった。これらのF0 mouseに片腎摘出を行い、10ヶ月後残腎の構造解析を行ったところ、wild typeでは正常であったが、すべてのTgにおいてメサンジウム基質の増加から糸球体硬化までの顕著な糸球体異常が観察された。そこでF1 mouseに低容量のGBM-Abを投与したところ、wild typeに比較しTgでは尿中Albの増加、Crの上昇、糸球体硬化および間質障害の増悪がみられた。Bmp7は上皮細胞に発現しその受容体はメサンギウム細胞(MES)に存在することから、培養MESにおいてBMP7の効果を検討したところ、BM7はMESにおける基質産生を有意に抑制した。以上の知見から内在性のBMP7はメサンジウム細胞において基質代謝の調節に重要な役割を担うことが示唆された。
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