研究概要 |
高血圧性腎症、慢性腎炎、糖尿病性腎症いずれの疾患も最終的に糸球体硬化に至り腎不全へと進行する。糸球体硬化は糸球体内圧の上昇がその大きな要因であることが知られている。腎においては「輸入細動脈-傍糸球体装置-輸入細動脈」で尿細管ー糸球体フィードバック機構(TGF)を介し糸球体内圧を変化させ体液調節をおこなっている。神経型NOS(nNOS)はこの部位に局在と発現の調節が発見され、糸球体内圧の調節に重要な働きをもつと考えられる。ラットにおいてnNOSの選択的阻害をすると糸球体濾過率が低下すること、糖尿病性腎症のモデルでnNOSが減少していくこと、腎不全モデルラットで腎不全の進行と共に腎内のnNOSの発現が減少していくことが報告されており、糸球体内圧の減少という観点からnNOSは理論的には腎保護的に作用することが予想される。しかし腎保護作用を期待してnNOSを増やす試みはまだなされていない。腎不全治療の新しい治療法としてのnNOSの発現の増加を試みる。 腎不全のモデルとして6分の5腎摘出ラットを作成。180g-200gのWistar ratの腹腔内に,pentbarbitalを注射し、麻酔後に開腹。右腎は摘出し、左腎の腎動脈の分枝を1ないし2本結紮し、左腎の3/2の腎梗塞を作る。コントロールグループは開腹術のみ行う。 このラット腎にnNOSのcDNAを組み込んだアデノウィルスを発現させる予定である。現在共同究者の筒井と協力し、Adenovirus epression vector kitを用いてアデノウィルスへのcDNAの組み込みに取り組んでいるところである。nNOSのcDNAは米国Johns Hopkins大学,Dr.Snyderからの提供により入手することができた。 追加決定であった為、実験の開始進行が遅れているが、nNOSのcDNA組み込みアデノウィルスの作成を待って進めていく方針である。
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