研究課題
Creutzfeldt-Jakob病(CJD)は治療法の確立していない感染性致死性疾患である。大多数の症例では感染経路が明らかにできないことも不安を大きくしている要因である。感染拡大予防、治療法の開発という点で早期確定診断は重要である。現在のところ確定診断は病理解剖、脳生検以外にない。早期診断のために尿由来Proteinase K(PK)抵抗性プリオン蛋白(CJDの病因である異常型プリオン)が診断法として期待されている。CJD患者尿からPK抵抗性プリオン蛋白が検出される。これは蛋白尿(-)の患者尿からも検出され、逆にネフローゼ症候群などの蛋白尿があり、器質的脳疾患を有しない患者尿からは検出されなかった。腎での蛋白再吸収障害によるものではないことが明らかになった。また、頻度は低いものの脳血管障害、脳炎などの脳疾患患者尿からも検出されることから、当初の期待とは異なり、CJDに特異度は高いものの、特有の所見ではないことがわかった。短時間に高度の器質的脳障害を引き起こす疾患では尿由来PK抵抗性プリオン蛋白が陽性になることから、この所見でCJDの確定診断を下すことは難しい。病歴や髄液・脳波・画像所見など、他の所見と組み合わせることにより、生前診断に極めて有用であると考える。急激な脳崩壊に伴って、脳に存在する正常型プリオンが尿中にも流出し、処理過程でPK抵抗性を獲得するのではないか、との仮説を検証するため、正常型プリオンのcDNAを作製し、このcDNAをもとに正常型プリオン蛋白合成を試みたが、これまでのところ合成に成功していない。正常型プリオンを合成し、検体処理過程(透析が関係するのでは、と考えている)でPK抵抗性を獲得するかどうか、の検証が来年度の課題である。
すべて 2004
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