研究概要 |
平成17年度は下記の仮説の検証を行った。 1:尿中Proteinase K抵抗性のプリオン蛋白は本当に脳起源と結論付けて良いか Creutzfeldt-Jakob病(CJD)患者の尿からはProteinase K抵抗性の物質を抗プリオン蛋白単クローン抗体,3F4や6H4で検出することができ、脳障害を有しない尿蛋白陽性の腎障害患者尿からは検出できなかった。このことから腎障害とProteinase K抵抗性の尿中物質とは直接の関連はないものと考えられた。しかし、CJD患者尿でも、尿採取の数日のずれでも陽性になったり、陰性になるなど、必ずしも結果が一定しないことが度々認められるようになった。また、通常のプリオン蛋白検出時には認められる、Ptoteinase Kで処理した時のmolecular shiftが認められなかった。陳急性脳梗塞患者からも陽性所見が認められ、必ずしも脳障害と関連しない事例が認められるようになった。蛋白尿との関連は否定できたが、脳障害との関連付け、尿中Proteinase K抵抗性のプリオン蛋白が脳起源と結論付けることはできなかった。 2:尿中Proteinase K抵抗性プリオン蛋白に感染性がないと考えられている理由は何故か 急激な脳障害により正常型のプリオン蛋白が髄液、血液中に放出され、それが尿中から検出過程でProteinase K抵抗性を獲得するのではないか、と仮説をたてたが、この仮説を実証することはできなかった。また、1の項目で検討したように、脳起源ということも実証できなかった。最近別の異なる研究者達から尿中Proteinase K抵抗性の物質はプリオン蛋白ではなく、尿路に感染した細菌の外膜蛋白であることが報告された。 尿を用いてCJD早期診断法を確立することは困難であった。
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