今年度、申請者はα1A-Caチャネル遺伝子内CAGリピートの異常伸長が原因であるSCA6の本態、特に異常タンパクの分解機構を明らかにすることを目的として、SCA6細胞モデルを構築し以下の解析を行った。まずα1A-Caチャネルタンパクのポリグルタミンリピート部分とC末端を含む、約75kdの変異truncated proteinをテトラサイクリン制御下に安定的に発現する細胞モデルを樹立した。truncated proteinのN末端側に付加したHAに対する抗体を用いた免疫染色では、truncated proteinのN末端側は細胞質内に粗大顆粒状に存在することが判明した。またC末端側に付加したMycに対する抗体による免疫染色では、C末端側は主として核内に存在し、splisosomeと共局在することが明らかになった。さらにタンパク分解に関与する分子の細胞内局在を、各種抗体を用いた免疫染色により検討した。まず、抗ユビキチン抗体による免疫染色では細胞質内にユビキチン陽性の構造物をみとめた。しかしながら、この構造物は変異truncated proteinと局在を異にしていた。このように、今年度の研究で、SCA6と他のポリグルタミン病との異同がいくつかの点で明らかになった。まず、変異蛋白の一部分がsplisosomeと共局在することはataxin-3やataxin-7(申請者の未発表データ)などのポリグルタミン蛋白にも認められる現象であり、ポリグルタミン蛋白に共通する機能の存在が示唆される所見である。また変異蛋白が共局在しないユビキチン陽性構造物の存在は"変異蛋白自身はユビキチン-プロテアソーム系による分解を受けないが、ユビキチンー-プロテアソーム系にストレスをかけている"ことをうかがわせるユニークな所見と考えられた。
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