α1A-Caチャネル遺伝子内CAGリピートの異常伸長が原因であるSCA6の本態、特に異常タンパクの分解機構を明らかにすることを目的として、以下の研究を行った。昨年度報告した28回のポリグルタミンリピートを含むC末端側フラグメント(FL28Q)を発現するテトラサイクリン制御性の安定株に加えて正常長ポリグルタミンリピートを含むフラグメント(FL13Q)を発現する細胞株を樹立した。まず、両者において細胞毒性を検討したところ、FL13Qは細胞毒性を有さなかったが、FL28Qには毒性があることが判明した。免疫染色による経時解析では、FL28Qは発現開始から7日程度で細胞質内に凝集体をつくることがわかった。ユビキチンなど、これまで知られているポリグルタミン病核内封入体の構成成分の多くとこの凝集体の局在を検討したが、共局在はみとめられなかった。一方、ポリユビキチンを認識する抗体による免疫染色ではFL28Q凝集体とは異なるユビキチン陽性細胞質内凝集体が観察された。変異蛋白が共局在しないユビキチン陽性構造物の出現から、"変異蛋白自身はユビキチン-プロテアソーム系による分解を受けないが、ユビキチン-プロテアソーム系にストレスをかけている"ことが推測され、FL28Qにより惹起された細胞死の原因となっている可能性が考えられた。さらに、疾患との関係を明らかにするためにSCA6脳におけるポリユビキチンの局在を検討した。抗ポリユビキチン抗体は小脳プルキンエ細胞内の細胞質内封入体を認識せず、顆粒細胞内の構造物を認識することが判明し、SCA6脳においても何らかのユビキチン-プロテアソーム系に対するストレスがかかっている可能性がうかがわれた。
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