研究概要 |
DNA修復機構の障害を原因とする疾患は多岐に及ぶが、色素性乾皮症,コケイン症候群など中枢神経障害を呈するタイプでは一本鎖DNA修復障害に伴う転写障害(転写共役修復transcription coupled repairの障害)の存在が示唆されているが詳細は不明である。今回本研究は、APTXが転写共役修復に重要な役割を果たしている仮説のもとに、新規蛋白質APTXの中枢神経系におけるDNA修復機構に関連する生理機能の解明、一本鎖DNA修復障害に伴う転写障害による神経細胞死のメカニズムの解明を目的とした。 APTXのN末端から段階的にの欠失する5種類のコンストラクト、およびXRCC1のC末から段階的に欠失させた5種類のコンストラクトを作成し、Yeast two hybrid systemを用いて相互作用部位の決定を試みた。Long form APTXのN末端20アミノ酸とXRCC1のC末端に位置するBRCTドメインが相互作用することが判明した。 組換えAPTXタンパク質を作成し、in vitroでのオリゴヌクレチドを用いた再構成実験系において、3'exonuclease活性を証明し得た。APTXの3'exonucleaseの中枢神経系の生理機能として、DNA polymerase beta・DNA ligase IIIと共役して塩基除去修復におけるproof readingを行うこと、あるいは、一本鎖DNA修復過程でunconventional DNA 3'-endを処理することが推定された。今後、APTX欠損と神経細胞死との関連の解明が重要と考えられる。
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