研究概要 |
重症筋無力症myasthenia gravis(MG)は神経筋接合部シナプス後膜上のアセチルコリン受容体acetylcholine receptor(AChR)に対する自己抗体により引き起こされる自己免疫疾患である。MGの臨床的特徴として、胸腺異常を高率に合併することがあげられる。約90%のMG患者で胸腺の異常があり、その約80%が胸腺過形成、20%が胸腺腫である。胸腺腫合併MGは非合併と異なり、難治性である(ステロイドの減量が難しい)ことが知られている。我々は、胸腺腫合併MGの免疫学的異常を明らかにするために、血清中のサイトカインと自己抗体を測定した。サイトカイン濃度の測定にはEnzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)を、抗サイトカイン抗体の測定にはELISA変法を、抗アセチルコリン受容体抗体(AChRAb)の測定には、免疫沈降法を用いた。Th1・Th2バランスに影響を与えるInterferon(IFN)-α,IFN-γ,Interleukin(IL)-4,IL-12p40,IL-12p70の中で、IL-12p40が胸腺腫合併MG群で有意に高いことがわかった。コントロールとして、MG非合併胸腺腫例についても検討したが、この群ではIL-12p40の上昇が見られなかった。一方、AChRAbは胸腺組織に関係なく全てのMGにおいて上昇していた。抗サイトカイン抗体の中では、抗IL-12p70抗体は胸腺腫合併MG例とMG非合併胸腺腫例で高値であったが、抗IL-12p40抗体は胸腺腫MG例のみで上昇していることがわかった。以上より、胸腺腫合併MG例の免疫学的特徴として、血清IL-12p40と抗IL-12p40抗体の上昇があり、MGの中でも特殊な免疫学的背景を持っていることがわかった。
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