研究課題
筋強直性ジストロフィー症の病態について、異常繰り返しを有するmRNAが他のmRNA制御に影響を与え種々の症状を呈するという仮説が病態メカニズムとして注目されている。われわれは、特に筋の成熟分化機構にかかわるmRNA制御に障害があると想定し、モデルマウス、生検筋、チャネル発現システムを用いて、本症の病態解明、治療予想モデルの確立を目指して研究を行なった。まず、筋成熟時にスプライシング様式が変化する蛋白に注目し、患者筋およびモデルマウスでmRNAの変化をRT/PCR法にて検討した結果、われわれが既に発見していたリアノジン受容体に加え、筋小胞体カルシウムポンプ(SERCA)にスプライシング異常が存在すること見出した。両者は筋小胞体内や細胞内のカルシウム濃度制御に重要なタンパクであり、カルシウム恒常性の異常が本症骨格筋の病態に関与することを強く示唆する結果であった。さらに、このリアノジン受容体のスプライシング変異体の機能について、オーストラリア国立大との共同研究を行い、本症で増加している変異体はリアノジンに対する親和性が低下し、カルシウム遊離作用が低下していることが判明した。一方、筋強直症状の治療法開発という観点から、クラスIc抗不整脈薬(フレカイニド)の骨格筋型Naチャネルに対する作用について、培養細胞を用いたチャネル発現系で検討した。その結果、臨床投与量でも十分なチャネル抑制効果があることが判明し、治療薬としての可能性が示された。さらにコンピューターシュミレーションなどを用いた治療予測モデルにつながる基本的データも合わせて取得することが出来た。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Human Molecular Genetics 14・15
ページ: 2189-2200
European Journal of Pharmacology 532・1-2
ページ: 24-31