研究概要 |
背景:てんかん原性がどこに存在するかについては脳の構造から(1)海馬・扁桃核を含む側頭葉内側部(2)それ以外の新皮質、の大きく2つに分類することができる。新皮質にてんかん原性がある疾患群としては脳回や新皮質層構造の局所的な形成異常がある局所皮質形成異常(Focal cortical dysplasia)が注目されている。動物実験においては、痙攣を起こさない程度の微弱な電流を海馬に間欠的に与えることで、同部位がてんかん原性をもつことが知られている(キンドリング現象)。そこで本研究ではラットに局所皮質形成異常を形成させ、同部位に海馬と同様のキンドリング現象が生じるか否かを明らかにする試みを行った。昨年度はラット出生日にアイスプローブを子ラット頭部に接触させてFreezed lesion(FL)を作成したが、FLのあるラット、すなわち局所皮質形成異常を有するラットとコントロールラットでは後放電の持続時間に有意差がなかった。またさらに局所皮質形成異常部には神経新生はみられなかった。そこで今年度は、FL作成に工夫を加え、出生時ではなく胎生期にFLを作成し、昨年度と同様に後放電の持続時間を検討した。 方法:胎生18日のラット左頭蓋部に子宮壁外からアイスプローブを接触させFLを作成。対象は7匹。コントロールとして常温のプローブを接触させたラット7匹。出生4週目に硬膜外電極を設置し、50Hz,5秒の双極矩形波定電流で右半球を刺激。後放電を生じる強度の電流を刺激閾値とし、これを1日1回,30日間施行。後放電の持続時間をrepeated measure ANOVAにて比較した。刺激終了後ラット脳の組織学的検討も行った。 結果:後放電の持続時間:FL群13.5±5.2秒、無FL群9.5±3.3秒(p<0.01)と、両者間で有意差を認めた。組織ではFL群は皮質層構造の異常、皮質下の異所性灰白質を認め、局所皮質異形成を呈していた。 結論:局所皮質異形成を有するラットモデルの作成に成功し、同部の興奮性の増大を認めた。
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