研究課題
基盤研究(C)
難治性てんかんの原因として重要なものに局所皮質奇形がある。しかし生体におけるてんかん原性の機序は未だ不明である。局所皮質奇形を解析する動物モデルとして、現在出生後のラット頭部への冷却刺激でfreezelesion(FL)を形成するものがある。このモデルでは組織にて異常な脳溝や脳回が形成され、またin vitroではてんかん発射も確認されているが、逆にin vivoでは今までてんかん原性は証明されていない。そこで我々は出生前にFLを作成した動物モデルを用い、in vivoのてんかん原性を検討した。妊娠18日目の母ラットの腹部を切開し、胎児の左頭蓋部に液体窒素で冷却した金属プローブを接触させた。出生後にラットの右前頭部を40日間電気刺激し、キンドリング現象を観察し、後放電(ADs:afterdischarges)の出現する刺激閾値と持続時間を記録した。さらに電気刺激終了の前後にラット脳を摘出し、形態的免疫組織学的検討を行った。FLモデルでは、皮質と海馬でのADsの持続時間が対照群に比べ有意に延長していた。さらに全てのFL群と一部の対照群では皮質だけでなく側頭葉てんかん類似の海馬のキンドリング現象が生じ、この現象獲得までの日数はFL群で有意に短かった。FL群の組織所見では局所的な皮質層構造の顕著な乱れと神経樹状突起や軸索の極性の喪失が見られた。これはヒトの局所皮質異形成と類似していた。また皮質や皮質下白質に異所性灰白質(heterotopia)が見られた。これらの部分での免疫染色では、グルタミン酸レセプターサブユニットやグルタミン酸トランスポーターの染色性が電気刺激前の段階で既に有意に上昇しており、電気刺激後はさらに顕著となっていた。妊娠後期での大脳への冷却刺激により、局所皮質異形成や異所性灰白質が出現することが示された。さらにそれらを持ったラットでは電気刺激に対する皮質や海馬の反応性が亢進しており、特に側頭葉てんかんへの密接な関連が示唆された。これにはFLでの神経ネットワークの形成異常やグルタミン酸レセプターサブユニットの過剰発現が関与している可能性がある。ヒトでも局所皮質異形成と側頭葉てんかんとの関連はよく議論されるところであり、このモデルは局所皮質奇形がてんかん原性の発生に重要な影響を与えることを示した。
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