研究概要 |
Neurosinは脳内に広く発現するセリンプロテアーゼで,アルツハイマー病(AD)の老人斑,パーキンソン病(PD)のレビー小体に局在する.α-シヌクレインはADで認められる老人斑と,PDやレビー小体型痴呆(DLB)で認められるレビー小体の構成蛋白である.α-シヌクレインはリジンを多く含む蛋白であるのに対して,Neurosinなどのセリンプロテアーゼはリジンを標的として分解する酵素である.従って脳内発現セリンプロテアーゼはこれらの異常凝集物質を分解する経路に関与し,発症機構においても重要な役割を果たしている可能性が強い.申請者らは老人斑とレビー小体の代謝過程に脳内発現セリンプロテアーゼが関与し,その代謝過程が阻害されるためDLBが発症するという仮説の検証のため,本年度は野生型,A53T変異型のαシヌクレインを大腸菌ベクターへ組み込み,その後蛋白発現ベクターで発現させ,リコンビナントαシヌクレインを精製するところまでを行った. Neurosinについては11種類のSNPsが既に報告されており,5'側非翻訳領域に2種類のSNPsが存在する.またHippostasinには第32アミノ酸残基がAla→Thrへ置換するSNPが存在する.このSNPsに注目し,AD, PD, DLB患者と正常対照者でこれらのSNPsの頻度を検討するため,44症例の研究協力者と108例の正常対照者から同意を得て採血を行い末梢血リンパ球からDNAを抽出し保存した.またAD,パーキンソン病,DLB症例における脳脊髄液中のNeurosin, Neuropsin, Hippostasin, Motopsinをsandwich ELISA法で定量するため脳脊髄液を保存した.
|